精一杯のおもてなしがしたい
感謝と挑戦を続ける三代目若女将
Monthly Guest vol.22
薗田 有美さん 旅館小戸荘 若女将
宮崎市街地の橘通りから一歩入ったところにある創業60年の旅館小戸荘。料理がおいしい店として利用するなじみ客も多い旅館だ。その3代目女将が薗田有美さん。きりっと髪を結い上げ、和服姿でお客をもてなす。
薗田さんが若女将として店に出るようになったのは20代半ば。祖母が造った店を母が継ぎ、一人娘の自分がその後を継ぐ。そのことに葛藤もあったが、吹っ切ることができたのは、店の昔からの常連さんの言葉だった。
「若い頃は給料が出たら小戸荘で食事をする。それがとても楽しみだったよと言われたんです。私が知らない小戸荘の姿を見たような気がして、継ぐことへの迷いがなくなりました」
それから間もなく結婚した薗田さんは、若女将業に励み、夫の健治さんは板前修行に入った。以来10年、ふたりは「真面目な頑張り屋」といわれる仕事ぶりで、店を盛り立ててきた。
薗田さんには、自称・負けず嫌いにまつわるエピソードがたくさんある。店の名物料理・小戸鍋が自宅で作れる「小戸鍋の素」を日本橋高島屋の味百選に出せるよう努力したことや、宮崎青年会議所の太鼓同好会初の女性メンバーとして認められたことなど、どの話も強い熱意がなくてはできない挑戦なのがわかる。
「お客様に育ててもらっているのだと心から思います。難しい注文をいただいて、内心逃げて帰りたくなる時もありますが、できるだけのことをやって喜んでもらうこともできるんです。だから絶対“ダメ”とは言わない。言葉には魂がありますからね。“もっとできる”という気持ちを言葉にするようにしています」
張りつめた毎日、お風呂上がりに少しだけ晩酌するのが1日のリセット。ほっとする時間だと言う。 現在、座敷で披露する篠笛の曲作りも進行中。これからも、お客様が笑顔になれる心からのおもてなしを、誠心誠意、提供し続けていく。
Profile
宮崎市出身。旅館小戸荘の一人娘。市内の企業で会社員としての勤務を経て、家業の跡を継ぐことを決意。また、旅館業だけでなく、「小戸鍋」を通して料亭としての知名度をあげることに尽力。平成12年に結婚し、現在2児の母として若女将業にも奮闘している。
●旅館 小戸荘
宮崎市橘通東2丁目9番8号
TEL:0985-23-2092
http://www.odosou.com/