伝統文化と伝統工芸品の
良さを伝え続ける
和の伝承人
Monthly Guest vol.84
田坂 由美子
和のギャラリー こう泥 草(KOUDEI KAYA)
主人
Profile
都城市出身。MRTラジオスクーピーやMRT宮崎放送のリポーターを担当していた経歴を持つ。その後、夫・田坂裕保さんが開業した「クリニック草」で和のギャラリーを始める。一昨年、移転し宮崎市昭和町で和のギャラリー「こう泥 草」を始める。
http://www.koudeikaya.com/
ギャラリーから日本の伝統文化や伝統工芸品のすばらしさを伝えているのは田坂由美子さん。和のギャラリー・こう泥 草には日本の古きよき文化と工芸品が集まっている。「日本の文化や工芸品は、意味があって生まれてきたんです。どうしてそういうモノが作られてきたのか、暮らしの中に必要とされてきたのか。ひとつひとつに意味があり、生活を支えてきました。しかし、大量生産でモノが豊富にあり、安価で手に入る現代では、こうした文化や工芸品は影を潜めるようになり、その作り手も技術も消えかけようとしています」。日本の良さに目を向けて欲しいという思いを込め、ギャラリーからの発信を続けている。
田坂さんが日本の文化や工芸品の良さに目覚めたのは結婚後。夫で医師の田坂裕保さんの研究に付き合い、3年間アメリカで暮らした。そのとき日本文化を知らない自分に気づいた。帰国後、お茶、生け花、着付けなど和の文化を学び始め、ホンモノを求めて京都へ行くこともあった。追求の旅を通して魅力的な伝統工芸品とも出会った。その作り手を訪ね、歴史やモノづくりへ込める思いに触れることで、1つのモノの重みを肌で感じる日々を重ねてきた。
全国各地のいいものを宮崎の人が手に取れるようにと、夫が「クリニック草」を開業したときに、横に小さなギャラリーを作ったのが、和のギャラリー こう泥 草の始まりだ。夫の他界後、現在の店舗へ移転。絵や京人形、古布小物、和雑貨などを並べ、喫茶もできるようにした。手に取ってみなくてもネットなどで購入できる便利な時代。田坂さんは人と人が向き合い、手から手へ渡すことを大切にしている。「じっくり考えて、『これ!』と思って買ったら大切に扱うし、愛着が沸くでしょう。どういうところがいいのか、どうしてこの価格なのかをしっかり説明するようにしています。だから、みなさん下駄でも何回も張り替えにきて長く使っています」。
モノから生まれる出会いを田坂さんは提供している。一つのモノを手にすることで歴史を知り、作り手の思いに出会う。そのモノを暮らしに取り入れることで、モノとの新しいストーリーが始まる。「ホンモノは日々の暮らしを豊かにしてくれます」と優しく語る。好奇心旺盛で行動派、全国各地を巡るのが大好き。仕事と遊びの境界なく何事も楽しむようにしている田坂さん。頑張った日のホッとしたい夜、寝る前に焼酎グラスを傾けるのがお気に入りの時間。「シンプルに水割りで飲むんです。香りを楽しみながら」。
田坂さんが今、凝っているのは鋳物やぐい呑みグラス。鋳鉄のグリル鍋や鉄瓶などワクワクするような雑貨を並べている。身近なところから和の良さをより多くの人に伝えていきたいと話す。伝えることの大切さと伝わったときの喜びを励みに、人と人、人とモノを今日もどこかでつないでいる。
うまみがのった刺身と
おいしい酒が楽しめる
一人でも行ける和食処
宮崎市繁華街のビルを上がり、2階の扉を開くと、和の空間が広がる『飲み喰い処 こりん』。カウンターを中央におき、右側に座敷、左側に個室があるこじんまりとした店内。カウンターに立つ大将・谷端祐介さんが、納得のいく料理を出す、魚と酒が楽しめる和食の店だ。
ゲストの田坂由美子さんは知人の勧めで利用するようになった。そんな田坂さんが来店したときに決まってオーダーするのは刺身。「宮崎で刺身を食べるなら『こりん』と言われるようになりたい」と大将が情熱を注ぐ自信作。天然の地魚を中心に、熟成させ、旨みがのって最もおいしく食べられる頃合いを見計らい提供している。
同じ魚でも季節によって味わいが変わる。寝かせたり、炙ったり、たたきにしたり。その時々で一番おいしく食べられるように大将が腕を光らせる。自家製のカラスミを大根といただく「カラスミ大根」や、魚のあら煮も自信の逸品。ほか、魚の焼き物や旬野菜の季節料理なども登場し、その日の仕入れによってメニューは日々変わる。大将自らが筆で手書きするお品書きが出迎えてくれる。魚が食べたくなった夜、一人でもふらっと立ち寄れる店だ。
▲「刺身盛り合わせ」2人前2160円~(税込)、▲「カラスミ大根」1080円(税込)
飲み喰い処
こりん
住所 宮崎市中央通1-18大蔵ビル2F
電話番号 0985-31-0020
営業時間 18:00~24:00
定休日 不定休