【Charge】SPECIAL INTERVIEW ~青柳翔~

aoyagi_1●まず『たたら侍』の話を最初にうかがったのはいつ頃だったのでしょうか?
青柳翔「錦織良成監督からお話をうかがったのは隠岐諸島に伝わる古典相撲と家族の絆をテーマにした『渾身 KON-SHIN』(2012年)のプロモーションをしている時でした。また一緒に仕事をしたいという話になった時に、本当に軽い感じで監督が「時代劇なんてどう?」とおっしゃったんです。その時に〈たたら〉のお話も少しされていました。でも、それがまさかこんなにたくさんの方々が協力してくださるような作品になるとは正直思ってもみませんでした。HIROさんやATSUSHIさん、AKIRAさん、直己さん、石井杏奈ちゃん、早乙女太一くんといった同じ事務所の方はもちろん、津川雅彦さんや奈良岡朋子さんといった共演者、スタッフのみんなさんのおかげだと感謝しています」

●錦織監督と『渾身 KON-SHIN』でご一緒した時はどんな印象を持ちましたか?
青柳翔「正しく言い表せているか自信がありませんが、周りの人をその気にさせるのがうまい方だなという印象でした(笑)。監督はとにかく自分の撮影したい画への想いが強い方なんです。その想い、例えば場所に対するこだわりやシーンに対する想い、人物に対する想いなどをしっかりスタッフのみなさんや出演者に伝えて、1シーンずつ撮影していく。その熱意に引っ張られてスタッフのみなさんも一丸となって良い作品を生み出していくんです。僕もそんな監督の想いに引っ張っていただきました。もちろん監督だけではなく撮影の佐光朗さんや照明の吉角荘介さん、録音の西岡正己さん、そして残念ながら公開を前に亡くなられてしまいましたが美術の池谷仙克さんなどいろいろな方々から本当に良いアドバイスをいただきました。本当にありがたかったです」

●最初に脚本を読まれた時はどんな感想を持たれましたか?
青柳翔「やはりまず感じたのは、主人公の伍介は人を斬らないということです。そこは監督にも質問させていただいた部分でした。ラストに向けてどういう風に演じたらいいのか、自分の中でもいろいろと考えましたし、相談もしました。とにかく人が斬られて血しぶきが飛び散るというような描写は一切ないんです」

●改めてうかがいたいのですが、〈たたら吹き〉の仕事とはどういうものなのでしょうか?
青柳翔「日本刀を作るには玉鋼(たまはがね)という純度の高い鉄が必要となります。それを作るため奥出雲に古来から伝わっている製鉄技術が〈たたら吹き〉なんです。本編でも実際の〈たたら〉で3日間ほど撮影しましたし、その前にも〈たたら〉がどういうものなのかを体験させていただいたりしました。その時に実際の村下にもお会いしましたが、言われたのはとにかく「炎に立ち向かえ」ということでした。その熱さに耐えて立ち向かった者だけが作ることができるのが玉鋼。劇中で作られていた玉鋼は本当に質の良いもので、それがあればまちがいなく良い刀ができる。その刀は1000年錆びないらしいんですが、まさに質の高さの証明でもあります」

●次に伍介というキャラクターですが、どんな人物だと感じましたか?
青柳翔「最終的に斬らないという信念に達するまで成長していく様を見せることが、伍介を演じることだと解釈していました。村を守りたいという想いから侍になることを決意する男ですが、とにかく何度も何度もいろんなところで失敗する人物なので、演じるのはとても難しかったです。演じやすいかどうかと聞かれたら、正直演じにくい役でした。でも、演じやすいのが良いわけではないと思いますし、逆に難しい役だからこそ、いろんな人に話を聞いたり相談しながらできたので、自分にとっては貴重な経験になりました」

●勾玉の首飾りをかけていたりと、衣裳等、今までの時代劇にはない感覚を受け取ったのですが?
青柳翔「今回の衣裳はEXILE を始めアーティストの衣裳も手がけるLDH apparel が担当してくださっています。だから、今までにはなかった時代劇の服を着てチャレンジすることができました。例えば、伍介の服はデニムのような生地を加工して作っているんですが、カスリと呼ばれる生地が出雲地方にはあるんです。そういった布から作った衣裳に、着古したようにダメージ加工が施されていたりしたんです。実際着心地は柔らかくて動きやすかったです。だんだん肌になじんでくるから愛着も湧きましたし、衣裳的には自分が着ていたものがとにかく一番好きでした。草鞋などは逆に動きづらくて何度か草履自体が切れることもありました。手足や顔の汚しなども丁寧にしていただきました」

●殺陣などアクション・ディレクターは『ラストサムライ』でも知られる飯塚吉夫氏ですが、現場ではどんなお話をされましたか?
青柳翔「他愛もない話ですが、当時は本当に刀を振りかぶったりしたのかということです。その間に突かれたらおしまいですから、実際は突きが一番強いのではないかという話をしていました。でも、昔の方の常人ではない肉体の凄まじさで振りかぶっても大丈夫だったのかもしれない、なんて話をしていました」

●飯塚さんの殺陣は観ていてとても生っぽいような印象を覚えましたが?
青柳翔「そうですね。監督が確かリアルな殺陣をやりたいとおっしゃっていたので、それで斬るにしても3人以上は刃が鈍って難しいとか、そういう生々しさを大切にしていたように思います。黒澤明監督の映画で立ち回り中に持ち手を失った刀を拾っては次の立ち回りをしていくという場面があったりしましたが、そういうことを忠実にやりたいと言っておられました。飯塚さんにうかがったのですが、ハリウッドでは殺陣に香港型を取り入れることが多いそうです。飯塚さんは今回とにかくリアリティを追求したいという監督の想いに惹かれたそうで、一太刀が重いものになったように感じました。実際に人を斬る音にしても、今作では骨にぶつかる音を入れているそうなので、余計に生々しく思えるのかもしれません」

●共演されたEXILE AKIRAさんや小林直己さんの印象もお聞かせください。
青柳翔「お2人ともとにかく殺陣のシーンが多かったんです。AKIRAさんは時代劇もやられていますし、殺陣なども早かったですね。稽古の段階から本番まで見学もさせていただいたので、演技はもちろん現場での立ち振る舞いまでいろいろ学ぶことが多かったです。周りに気を配られている様も感じましたし、勉強になりました。直己さんも殺陣が多くて、殺陣師の方とコミュニケーションを取りながら、殺陣の構成を一緒に練っていらっしゃるのを見ていて、改めて凄い方だなと思いました。印象的だったのは、ある日、セットの近くにあった森を昼食も取らずに立ったままじっと見つめていたこと。なぜそうされていたのかは聞いていませんが、思うにご自身が演じる役の住んでいる世界観に極力身を置くことで、役に集中しようとしていたのだと思います。実際、時間があれば直己さんが住んでいる設定の家にずっといらっしゃいましたし、食事もそこで取られるようにされてました。あと、直己さんはタフです。雨中のアクション・シーンがあるんですが、尋常じゃないくらいに寒かったんです。その中で倒れた時に僕はうつ伏せで顔を横にそむけた状態だったんですが、それでも寒くて動かずにはいられなかった。直己さんは仰向けに寝て、もう顔が水没直前くらいまで水が来ていたにも関わらず、微動だにしなかったんです。しかも、次の日はライヴが入っているスケジュールだったりと、本当にタフな方だなとつくづく感じました」

●他にも今回はベテランの方も多数出演されていますが、みなさんとお話されたりしたか?
青柳翔「津川雅彦さんは津川家の犬の話をしてくださいました(笑)。また、奈良岡朋子さんとは食事をご一緒させていただいたりと、楽しい時間を過ごさせていただきました。甲本雅之さんとは『渾身』でも共演させていただいていて、今回も「伍介がやりたいことをやればいいよ」と言ってくださいました。甲本さんはいつも全力で役に取り組まれる方であり、今作でも本当に支えていただきました。本当に日本の映画界を代表するような方々に囲まれながらの撮影で、勉強になることばかりでした」

●島根県の奥出雲地方にオープン・セットを建てての撮影となったわけですが、実際に行かれてみていかがでしたか?
青柳翔「セットを建ててくださった方々が、出雲大社の遷宮にも携わる地元の宮大工や材木問屋、建設会社の方々で本当に土台がしっかりとしたセットだったんです。こんなに広くてすばらしいオーブン・セットの中でお芝居ができるなんて、一生のうちにあるかないかのことだと感じました。世界観に入り込みやすかったですね」

●〈たたら吹き〉の現場である、オープン・セット内に再現された高殿(たかどの)の出来はいかがでしたか?
青柳翔「現代の村下である木原氏の監修の元にあのセットは組まれたそうですが、昔ながらの手法で釘を使わず、木を組んで建てられた建物だったんです。いわば出雲大社と同じ作り方。というのも、釘や鉄筋などを使うとあまりに室内が高温になるので曲がってしまってかえって危ないそうなんです。実際に火を焚くと炎が一番上まで行ってしまったりしていましたし、温度も何百度にもなってしまうので、炉も地下構造まで造って中世の〈たたら吹き〉の現場を完全に再現していました。要は本物の炉だったんです。劇中で本当に玉鋼を作ったのですが、それは本当に日本刀の材料になりえるほど良質なものに仕上がったんです。撮影は夏だったんですが、本当は1月と2月に〈たたら吹き〉をやるものなので、撮影時の暑さはハンパないものでプロの方ですら苦戦する過酷な現場でした。僕は炉に砂鉄を入れるのが仕事という設定でしたが、その砂鉄を入れる時が一番暑かったですね。撮影している時は気が張っていたので大丈夫でしたが、尋常の精神状態では絶対に耐えられなかったと思います」

●今作の公開に合わせて現代の5名の刀匠によって五振りの刀剣が作られたと聞きました。それはどこかで見られるのでしょうか?
青柳翔「3月31日の完成披露試写会でお披露目させていただきました。その後は、劇場や博物館などで展示していく予定と聞いています」

●物語のテーマ性を語る上で自然も重要なポイントとなっていると思いましたが、印象的なロケ地について教えてください。
青柳翔「北国船に乗った伍介が旅立つシーンがあるんですが、青森で実物大に復元された木造船に乗船したんです。今で言う島根県の安来港まで石見銀山から出た銀や砂鉄を運んでいた船なのですが、その間で立ち寄ったところで〈たたら操業〉が盛んになっていったんだそうです。復元された船は自走ができないので2隻の船に牽引してもらって撮影は行われたのですが、いい経験をさせていただきました」

●青柳さんはAKIRAさん、直己さんと一緒に現在〈ご縁の国しまね〉という島根のPRもされているんですよね? ロケ地である島根県の印象はいかがですか?
青柳翔「島根は『渾身』で隠岐島にうかがわせていただいてから何度も訪れていますが、素敵な場所ですし、人も温かいですし、撮影にもとても協力的ですし、本当に大好きな場所です。こんな場所はそうそうないと感じると同時に、いつも温かいサポートに感謝しています」

●さらに主題歌についてですが、最初に聴かれた時の感想はいかがでしたか?
青柳翔「あ、これはエンドロールを最後まで観てしまうなと(笑)。最高の曲だと感じました。久石譲さんには音も何も入っていない状態のラフの映画をお見せして、そこからイメージを沸かせて作られたそうです。ATSUSHIさんの歌詞も久石さんと同じく映像を観て、心に残ったものから詞を組み立ててくださったそうです」

●改めて完成した作品を観て、ご自身で一番印象的だったシーンはどこでしょうか?
青柳翔「劇中で「憎しみの連鎖を断ち切る」といった意味合いの言葉が2度ほど出てくるんです。それを言われる側ではあるんですが、本当に簡単なことではないなと感じています。でも、それこそがこの作品に込められた大事なテーマのひとつなんだと個人的には思っています。もし大切な人を殺されたら、復讐を考えてしまうのは自然な心の動きなのかもしれませんが、それをくり返していたらさらに復讐心がどこかに生まれてしまう。怒りに身をまかせるのではなく、許すことの大切さなど、いろいろ考えさせられる作品になったと思います」

●また、本作は『第40回モントリオール世界映画祭』最優秀芸術賞の他、多数の映画祭でも受賞されていますね。どういうところが、海外でも評価を得られた要因だと思いますか?
青柳翔「映像もアクションも、本当に関わった全員がこだわりを持って作った作品だということだと思います。〈たたら吹き〉という題材も注目していただけるポイントだと思っていたので、様々な部分が評価されたのが嬉しいです。義を重んじるだけの従来の侍ではなく、ちょっと違う角度から見た日本の侍像が受け入れられたのではないかとも思います」

●ご自身の役者キャリアにとってこの作品はどういったものになると思いますか?
青柳翔「5月20日に公開されますが、みなさんに観ていただいた後、この映画が代表作になれるようがんばっていきたいです」

●では、ずばり青柳さんの考える一番の見どころとは?
青柳翔「美しい映像を始め、すばらしいアクション・シーン、そして伍介がいかに憎しみの連鎖を断ち切るかという物語まで、みんなのこだわりが詰まった作品になっていると思います。そういう意味で、どこかひとつではなく、すべてが見どころだと思います」

●最後に、今作が描こうとした〈侍〉=日本人像とはどんなものだったのでしょうか?
青柳翔「実は伍介が一番現代人っぽい発想の持ち主なのではないかと感じていました。伍介のように村を守りたい側の想いと、伝統を守りたい側の想い。どちらも正しいんですが、そこが交錯するのも今作の面白いところ。誰かを守りたいと思った時にいかなる行動を取るのか、ぜひみなさんにもそこを考えながら観てみていただけたら嬉しいです」


 

映画『たたら侍』
2017年5月20日 新宿バルト9、TOHOシネマズ新宿ほか全国公開
(c)2017「たたら侍」製作委員会
【公式サイト】tatara-samurai.jp/

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